発酵の世界のことをいざ知ろうとすると、微生物や菌、難解そうな発酵学や化学のお話がでてきて、挫折することがあるかと思います。そんな方が興味が湧くように、発酵の文化や文化人類学、はたまた人類の起源まで、とにかく発酵の面白さをポップに書かれているのが「発酵文化人類学」です。
発酵デザイナーというニッチな肩書きでありながら、それで生計がなりたつのかと疑問に思いますが、現在発酵は世界でも注目されています。油を使わずに低カロリーでコクをだせるため、先進国の肥満問題を解決の可能性をがあると言われています。プロダクトデザインなどを手がけていた著者小倉ヒラク氏は、仕事のしすぎで体を壊し、ある時、発酵食品を勧められて、食べ続けたところ、たちどころに体調がよくなったそうです。喘息やアトピーも改善したそうです。そこから「発酵デザイナー」として、活動を開始しました。
もともと、デザインの仕事は「人」と「サービス」の間を作るもの、そのテクニックやセンスを活かし、「発酵」と「人」の間を作ることを心がけて書かれたのは本書になります。
“祭りの後に人間は一度死に、別の存在になるのだ。人間やめて何になるかって?菌になるのさ”
(188ページより)
このような感じで、話し言葉で書かれた本書はコミュニケーションをとってるかのように、発酵の文化を旅することができる。ちなみに上記はお酒を飲んで酩酊状態になったことを語っている。
読後には発酵の仕組みがなんとなくわかり、微生物と人間社会の関わりなど文化的な側面もなんとなく理解できる。発酵の面白を知る足がかりにおすすめです。